健康と紫外線のおはなし

 

最近、登山を楽しまれる女性の方を中心に、紫外線による肌の炎症、肌荒れ、シミ等の発生が大きな悩みの種になっているようです。皮膚に紫外線があたると、どうのように体に悪影響を及ぼすのでしょうか? 山では1000m登るごとに、6〜10%位の割合で紫外線が強くなるといわれています。いつまでも若々しく健康的な肌を維持するため、山でこの紫外線とどう付き合っていけばよいのでしょうか? 紫外線が皮膚に及ぼす影響をお話ししながら、その対策を考えてみたいと思います。

「日焼け」とはどういうことでしょうか?
太陽光線にあたって4〜5時間もすると、皮膚に赤くなる反応があらわれます。これを紅斑反応(サンバーン)といいます。だいたい3〜4日後から皮膚は褐色になります。皮膚が褐色になることを色素沈着(サンタン)といいます。この変化は色素細胞がメラニンを増やしたために起こったものです。しかし、この変化は人によって個人差があり、それはその人の遺伝子が大きく関係しています。

遺伝子を傷つける活性酸素の発生
皮膚に紫外線があたると、そこには活性酸素という「やっかいな物質」が発生します。活性酸素は細胞や細胞の中の遺伝子を酸化させ、細胞を死滅させたり、遺伝子本来のもっている働きを害してしまいます。活性酸素の発生を抑えることがスキンケアにとってとても重要なことなのです。活性酸素は不対電子で不安定なため、細胞膜などの脂質から電子を奪います。これを酸化といい、活性酸素の害といえば、おもにこの酸化作用を指します。

活性酸素が皮膚の老化を早める
紫外線があたった表皮では、細胞の細胞膜、細胞質、核の中で活性酸素がつくられます。すると細胞は活性酸素の害から逃れるため、その作用を打ち消してしまう物質を外から取り込んで蓄えたり、自分でつくったりします。これが抗酸化物質で、スカベンジャーといいます。細胞でつくられるSODと呼ばれる酵素はこのスカベンジャーの1種です。通常、活性酸素は抗酸化物質と酵素により最後は水と酸素に分解されます。しかし、活性酸素の発生が大量でそれを処理しきれない場合は、その残った活性酸素が暴れだし、細胞膜の脂質を酸化し、細胞を死滅させてしまいます。酸化作用が細胞核にまで及ぶと、遺伝子DNAを傷つけたり、遺伝子を切ったりしていまうのです。その結果、遺伝子の変異を誘発し、皮膚がんの引き金となります。活性酸素には真皮のコラーゲンなどの繊維をかたく結びつけてしまう働きもあります。このため、皮膚は弾力を失い、皮膚の老化を早めます。老化した皮膚にはシワができます。特に長年にわたって日光を浴び続けた皮膚には深い溝が刻まれてしまいます。

紫外線によってシワはなぜできるのでしょうか?
真皮は皮膚の弾力性を保つコラーゲンとエラスチン、そしてその間をうめるヒアルロン酸からできており、これらの中に血管、神経、汗線、脂線などがうまっています。皮膚の弾力と張りは、このコラーゲンによって大きく左右されます。ところが、紫外線があたるとコラーゲン線維は小さく切断され、エラスチンが変性してしまいます。このため、皮膚が弾力を失ってたるみ、ひだができ、シワになるのです。一方、活性酸素によりコラーゲン線維がほかのコラーゲン線維とかたくつなげられてしまって、働きが悪くなることも、皮膚老化の原因のひとつになっています。7〜8月の真昼の太陽に20〜30分あたれば、その日の夕方には、私たちの皮膚は赤くなります。しかし、太陽光にわずか数分間浴びただけでも、数時間後から私たちのコラーゲンを小さく切る酵素がつくられ始めることに、気づく人はまずいないでしょう。コラーゲンを切ってしまうのは、コラナーゼという酵素の働きです。このような事実は皮膚を専門に研究している科学者により1996年にはじめて発表されました。

シミはどうしてできるのでしょうか?
日焼けをするとシミができることがあります。太陽光にさらされている部分を「日光曝露部」といいますが、加齢とともにこの部分に出てくるシミは、色素細胞がつくるメラニンの量が増加しすぎたためにできるのです。もう少し、わかりやすくいいます。メラニン色素がふえて茶色くこびりついた状態、それがシミです。シミをつくる原因となるのはもちろん紫外線です。日焼けで赤くなったあと、皮膚全体が日増しに黒くなります。紫外線を受けた表皮の角化細胞が直接的、間接的に色素細胞にメラニンをつくるように指示を発するからです。では、一部に限って色が濃くなるというのは、どのようなしくみが働いたからでしょうか?  それは、色素細胞のメラニンをつくる働きに関係している遺伝子のどこかに突然変異が起き、メラニンをつくりすぎたためだと考えられています。また、ほとんどの色素細胞には異常がなくても、太陽光線を浴び続けた結果、一部の色素細胞が刺激されて多量のメラニンをつくる可能性があるといわれています。

では、シミやシワを予防するにはどうしたらよいのでしょうか?
シミの発生の多くには太陽紫外線が大きくかかわっています。日焼けでないシミでも、そこに紫外線があたることによって色が濃くなっていきます。太陽紫外線を浴び続ける限りシミはなかなか取れないものです。まさに、肌の健康や美容の大敵は紫外線ですね。それでは、シミ、シワの発生を予防するにはどうしたらよいのでしょうか? まずは太陽紫外線を浴びない工夫をすることです。とくに直射日光を浴びないこと。太陽が真南にくる時間帯は紫外線も多く地上にとどきます。午前10時ごろから午後2時ごろまではさらに注意が必要です。登山の際はできるだけ、帽子、サングラス、長袖などを身に着け、できるだけ素肌をさらさないようにしてください。日焼け止めクリームも上手に使いましょう。また、日焼け対策用のスキンケア化粧品も利用されるとよいでしょう。しかし、いざ登山となると、直射日光があたるのを避けろといわれても、現実に難しい時があったり、日焼け止めクリームも汗で流れてしまったりと、思うようにいかないものです。また、スキンケア化粧品も皮膚の保水力を補う効果はあるものの、角膜層を通り抜けて真皮まで栄養素が届くわけではないので、根本的な対策にはならないのが現状のようです。さらにもっと有効な対策はないものでしょうか?

コラーゲンの効果を期待するなら「アミノ酸」を
そこで今大変注目されているのが、スキンケアアミノ酸です。皮膚の健康維持に皮膚の構成要素である栄養分を中から摂取しようというものです。肌の美しさは表皮下の真皮の状態で決まります。この真皮の70%を占めているのがコラーゲンです。コラーゲンはたんぱく質を主成分とする長いひも状の線維が3本からみあったもので、これがしっかり結ばれていて、なおかつ、密度が濃く、きれいに並んでいれば、フェルトのようにきめ細かくハリのある肌になります。
コラーゲンはいくつものアミノ酸が結合してできていますから、コラーゲンそのものの分子はかなり大きくなります。ですから、化粧品などに配合されているコラーゲンは、肌の上からつけても、皮膚の下まで吸収されることはありません。また、サプリメントに配合されているものも、体内で一度アミノ酸に分解されてから吸収されます。つまり、化粧品でもサプリメントでも、コラーゲン効果を期待するなら、最初から肌再生に役立つアミノ酸を摂ったほうがはるかに効果的といわれています。アミノ酸は、もうそれ以上分解の必要がありませんから、効果的な成分がすばやく吸収されるわけです。ですから、上記のような紫外線対策を行ないながら、スキンケアアミノ酸を摂取するというのが、これからの新しい紫外線対策になるのではないでしょうか? 

 

                            

 

 

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