中高年者登山者は自分の体力を知りましょう!

                                   日本山岳ガイド連盟認定ガイド 三島 健悦

 

『昔とったきねずか』を引きずっていませんか?

ご自分の体力を過大評価していませんか?

 

良く聞く話で運動会での親子競技(かけっこ)でのお父さんの転倒事故が非常に多い。子供の手前、昔はお父さんは足が速かったんだよと言いながら、気持とはうらはらに身体が付いて来ない、そして転倒…思い当たることはないですか。それは山でも同じことが言えます。

歳をとると、若い頃と比べて体力が低下することは、どなたでも知っているかと思います。昔はこんな山ぐらいでは疲れ知らずだったのに、こんな声をお客様から良く聞きます。私でもそうなのです。さて、どの種類の体力がどの程度低下するかを、具体的に知っていますか。

 ご自分の体力を知ることが、中高年登山者の安全登山の第一歩でしょう。

 

★行動体力が低下します。(20歳の能力を100%とすると)

 

 

20

40

50

60

敏捷性

全身反応時間

100

90

80

80%〜70

全身持久力

体重当たりの最大酸素摂取量

100

80

80%〜70

70%〜60

柔軟性

立位体前屈

100

80%〜70

70%〜60

60%50%

脚筋力

体重あたりの脚筋力

100

80%〜70

70%〜60

60%50

平衡性

閉眼片脚立ち

100

70%〜60

50%〜40%

40%〜30

 

この中で登山の行動体力の中心である脚筋力と全身持久力をみると、20歳の100%をピークとして60歳ではそれぞれ60%〜70%、50%〜60%と大きく低下しています。
ということは60歳の方が登山をするときには、歩く速さ、時間、距離、荷物の重さといった色々な「負荷」をすべて20歳の半分くらいでなければ、快適には歩けないことになります。でも、大方は早いスピードで我々のパーティを追い抜いていきます。そして段々ペースダウンして我々が前にでるのですが…。

また、一番低下の著しいのが平衡性(バランス)で60歳になると20歳のときの30%〜40%にも低下してしまう。このことが中高年登山者の「何でこんなところで転倒?
ということにつながっています。

★防衛体力が低下します。
 
防衛体力とは、激しい運動、環境(気温、気圧など)、物理的な衝撃、病原菌の侵入など、身体に加わるさまざまなストレスに対する抵抗力をいいます。この能力も歳をとると低下します。
たとえば、体温調整能力・疲労しやすく回復も遅い・内臓が弱くなる・骨がもろくなる・関節(膝や腰)が弱くなるなどです。

★体力の個人差は大きくなります。

若くても体力差は当然あります。しかし40歳を越えると、運動をしている方とそうでない方とは比較にならないほど体力差は大きくなります
たとえば同年代でも、歩くのもしんどいという人もいれば、8000m峰に無酸素で登ってしまう人もいます。
ですから中高年登山者は皆さんが登っているから、自分の登れると考えないで下さい。
自分の身体と相談しながら、ステップアップしてみてください。

 


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