トレーニングはしていますか?
トレーニングはお好きですか?
正直なお話をすると、私は山岳ガイドという職業ですが、特にトレーニングはしませんし、トレーニングは好きではありません。
奥多摩に近い青梅に住んでいますから、トレーニングが必要かなと思ったら奥多摩の山に行きます。そのほうが、単調なトレーニングをするより楽しいですからね。
●登山体力とスポーツ体力の違い
★スピード
登山は荷物を背負って坂道を歩くため、普通の歩行よりも更にスピードは遅くなります。色々なスポー ツの中でも、最もスピードの遅い運動だと思います。登山ではスピードに関する能力は全くといっ て必要としません。
★筋力
登山は、荷物を背負って登り下りをしなければならないので、ある程度の筋力は必要となります。しか し登山の場合は最大筋力の50%ぐらいの筋力しか発揮しません。そんなに大きな筋力を必要とする わけではないのです。
★持久力
競技スポーツの場合、マラソンでも2時間ぐらいで競技は終わってしまいます。しかし登山の行動時間 は何倍も長く、それを何日間も続けることもあります。様々なスポーツの中で、運動時間は最も長い と言えます。ですから持久力は重要です。
ただ、高い持久力が必要かといえばそうでもありません。登山では全身持久力の50%〜60%程度の能 力しか発揮していません。
結論からいうと、一般のスポーツは競技中に最大限の能力を使い、終了時には余力は残
らないという点では共通しています。
しかし、登山は自己の体力の限界まで使うことはまずありません。かなりの余力を残し
て運動をしています。かりに、体力の限界まで使ったとしたら、そこでダメになったら
ヘリのお世話になるのが関の山でしょう。
登山体力とスポーツ体力は違うといえます。
●登山に必要な筋力とは
・大腿四頭筋(ふともも前側の筋)
この筋は登山では一番重要な筋といえます。この筋は平地を歩く・走るという時にはあまり使われません。しかし、坂道を登る時には非常に貢献度が高い筋であり、段差の大きな
登りほど酷使されます。下りでは非常に大きな負担がかかる筋となります。
また、この筋を強化すると、膝関節を保護する能力が高まります。
・ 下腿三頭筋(ふくらはぎの筋)
通常の登山道ではあまり使われませんが、岩場や雪渓など、つま先立ちを要求される場面では負担度は増します。
・ 前脛骨筋(スネ、膝から下の前側の筋)
この筋は、坂道を上るときに、つま先を持ち上げる働きをします。
冬のスノシューのツアーで、わりと平坦地を歩いたのにこの筋の筋肉痛があったお客様が結構いました。この筋が弱いと、疲労した時つま先を地面に引きずりがちになるので、つまずきやすくなります。
・ 腹筋と背筋
腹筋と背筋は背骨の前後に付着し、これをまっすぐ伸ばす働きをしており「姿勢維持筋」
ともいわれます。登山では重い荷物を背負うことが多いので、この筋ガ弱いと荷物の重さに負けて姿勢が安定せず、疲労しやすいしバランスが悪くなります。
・ 上半身の筋(大胸筋、僧帽筋)
重い荷物を背負う場合には、上半身の筋も重要となります。これらの筋が弱いと、荷物
負けをしてしまい、荷物が後に引かれ、快適に歩けません。
『最良のトレーニングは登山』
山歩きの体力は、特別なトレーニングをしなくても、山歩きに頻繁に行けば身につく。
しかし、毎週のように山に行けばトレーニングにはなりますが、現実にはそれだけの頻度でなかなか行けないものです。そういう方は以下の補強トレーニングを行い、体力作りを行って下さい。中高年が身体に負担をかけずにできるお薦めのトレーニングは
・ 階段の上り下り
・ 大腿四頭筋強化のためにスクワット
・ 下肢三頭筋強化のためにかかと上げ
・ 柔軟性UPのためにストレッチング
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