講習会は6時30分からの開始となっていましたが、当日は5時30分ごろから、受講者が会場に訪れ始め、開始の時刻には満席となりました。大半が40〜60歳代の中高年方々で、男性と女性がだいたい同じ比率でした。
まず、山と渓谷社の小日向次長が挨拶に立たれ、「今回の講習会の内容は従来にない新しいテーマであり、これからの健康で安全な登山のためにぜひ生かしていただきたい」とのお話がありました。
冒頭、三島講師は山の楽しみについて、受講者の皆さんに尋ねました。
「皆さん、山歩きが健康に良いのは、ご存知ですよね。では、皆さんの山の目的と楽しみはなんでしょうか?」
三島講師があげる内容に、ほとんどの方が次々と手を上げていらっしゃいました。
「健康のため」、「山に登った、達成感、満足感」、「山と仲間」、「山と花」、「山と温泉」
「うーん、やっぱり山はいいですねー」 そして、また尋ねました。
「最後に、山と酒が楽しみの方?」
「ハィ!」っと真っ先に手をあげたのは、三島講師でした・・・・。
話題は中高年登山者の山での身体トラブルになりました。
講師がガイドをする上で、いつも気にかけるのが、登山者の方の身体トラブルだそうです。彼がガイドを務める時は、とにかくゆっくりしたペースで、体に負担をかけずに歩くように指導をしているそうですが、他のパーティには、かなり無理な歩き方をしている登山者がいるそうです。ここで、受講者の方々に再び手を上げてもらいました。自分が登山で経験する身体トラブルについてです。そして、会場にも、こんなにいらしゃることに驚いてしまいました。
@筋肉痛 50%
A下りでの脚のガクガク 40%
B膝に痛み 40%
C登りで苦しい 30%
そして、この身体トラブルには、歩行技術、摂取すべき栄養素と非常に密接な関係があることが説明されました。
山歩きに必要なのは、3大栄養素、すなわち、炭水化物、脂肪、たんぱく質です。具体的にどういうものを、いつどれだけ摂ったらよいのか実例を挙げて説明がありました。また、登山時の平均的な脱水量と補給すべき水分量の計算式が披露され、受講者の方々もその計算式に基き、ご自分の数量を算出していました。
水分の補給がバテ防止と体調保持のためにいかに重要かがレクチャーされました。
この時から、受講者の方々からの栄養摂取に関しての質問が相次ぎ、20分近くが急遽Q&Aのコーナーとなりました。
ここでのポイントをいくつかあげておきます。
1.エネルギーとなる脂肪は炭水化物があって、はじめて燃焼するものなので、炭水化物をしっかり摂ること。
しかも炭水化物は食いだめが出来ないので、コマメに摂ること。
2.炭水化物としての糖類を行動食として、利用すると良い。ブドウ糖やチョコレート等が代表的。
3.炭水化物の補給をせずに、登山をすることは筋肉を燃焼して食いつぶしながら歩くに等しい。
4.筋肉を守り、疲労物質である乳酸の発生を抑えるため、良質のたんぱく質(アミノ酸)を摂取すること。
5.水はがぶ飲みせずに適量、頻繁に飲むこと。のどが渇いたと思った時は実は脱水症状が始まっている。
そして、後半の講義では、いざ、登山中に思うように栄養素を摂れないときや、効果的に栄養素を補給するための方法がレクチャーされました。
そして、その効果的な手段として、サプリメントの利用があげられました。
サプリメントは薬品と違い、副作用がほとんどない食品でること。持ち運びが便利で、手軽にいつでも栄養摂取が可能な優れものであること。
各サプリメントが、どのように効果的に働くのか、そのメカニズムを示しながら、具体的な説明が行なわれました。
最近では、サプリメントに対する理解が高まってきたのでしょうか、受講者の多くの方々が、この登山のためのサプリメントの利用に興味を示されていたようです。
講習会終了後も、多くの方が会場に残り、栄養摂取やサプリメントに関する質問が続きました。
そして、9時近くになり、お開きとなりました。
(報告者 あとがき)
いかに安全で快適に登山を楽しんでいただくかが、私たちの願いです。単に、ひたすら頂上をめざすのではなく、仲間と語り合ったり、森林浴や、バードウォチング、スケッチ、花の観察などを楽しみながら、山を登れたらどんなに素晴らしいことでしょうか。自分の登山をするためには、自分の体力にあった山選び、無理のない計画、基礎体力作り、歩行技術、栄養摂取が大切です。しかしながら、時には、食べなくてはいけない時でも食べられない時があります。どうしても体が受けつけないのです。昔は喉が渇いても「水を飲むな」と言われたことがありました。でも、今は運動生理学見地からも「水はどんどん飲め」と言われています。あの時はいったい何だったのでしょうか?
登山をするにあたっても、根性論だけでは楽しくありませんし、意味がないと思います。今回の講座で、栄養摂取の大切さとその正しい理解を学びました。そのメカニズムを知ることは、安全で快適な登山をする上で、きっと役に立つはずです。これからも、皆さんとご一緒に勉強を続けていきたいと思います。 (報告者 湯谷
睦)
|